ネット非行・犯罪被害から子供たちを守ろう

(2018/7/20掲載)

スマホに潜む危険性 知っておこう

SNSで犯罪被害に発展

 スマートフォン(スマホ)やSNSの利用がきっかけとなったトラブルが絶えない。少年同士のもめ事だけではなく、犯罪に巻き込まれたり、遊び半分で投稿した書き込みが大きな問題に発展したことも。子供たちを犯罪被害から守り、また加害者となるような行動を防ぐため、大人が知っておくべきことは何か。福岡県警少年課など関係機関に聞いた。 (企画/スポーツ報知西部本社 協力/福岡県警少年課)

便利な機能も一歩間違えると…

 今年3月に内閣府が公表した青少年のインターネット利用環境実態調査(平成29年度)によると、高校生のスマホ利用率は95・9%。中学生でも58・1%にのぼった。10代後半のスマホ利用者の大半がSNSや無料通話アプリの機能を使ってコミュニケーションを取っており、スマホが生活の中心になっていると言える。

 

 一方でSNSの利用がきっかけとなった事件も増えている。昨年、福岡県内で起きたSNS等に起因した犯罪被害児童数は133人で、4年前に比べて倍増した。またグループ投稿での中傷や無視など、ネット上でのいじめを苦に自殺したという話も耳にする。トラブルから子供たちを守るには、まずは親や祖父母世代が「危険性」をしっかりと理解しておく必要がある。

SNS起因の被害児童数は年々増加

 福岡県のSNS等に起因した被害の罪種を調べてみると、児童ポルノが最も多く全体の46%を占めた。特に多いのが「自画撮り被害」だ。ネットで知り合った相手から「裸の写真を送って」と言葉巧みに誘導され、自分で撮影した裸姿の画像を送らされるというもの。より悪質なものになると、相手から「写真をばらまく」などと脅されて、さらに写真を送らされたり、実際にネット上で拡散されたりという被害も起きている。

 

 このほか、わいせつ行為をされた、その様子を撮影されていた、売春を強要されたという事例もあった。

 

福岡県警「サイバー補導強化」

 福岡県警少年課では、性犯罪被害から子供たちを守るため「サイバー補導」に力を入れている。コミュニティーサイト内をパトロールし、金銭目的でデートを求める投稿などがないかをチェック。そうした書き込みを発見した場合、連絡を取り合って待ち合わせをし、直接会って補導をしている。

 

手作業でチェック

 サイバー補導は機械を使った自動的なものではなく、県警職員が実際にスマホやパソコンを使い、不適切な書き込みがないか一つひとつ探していく手作業だ。昨年は204人を補導。この内7割が非行歴も補導歴もない、ごく普通の子供だと分かった。補導した少女に見知らぬ相手と金銭目的で会うことの危険性についてどう思うかを尋ねたところ、3割以上が「自分は大丈夫」「全く危険と思わない」と答えたという。

サイバー補導で補導された少年の内訳(2017年、福岡県警調べ)
サイバー補導で補導された少年の内訳(2017年、福岡県警調べ)

遊び半分で投稿…事件に

 SNSで他のユーザーから「いいね!」を押してもらいたいという思いからなのか、悪ふざけで危険行為を撮影したり、犯行予告を書き込んだりというニュースをよく聞く。こうしたネット非行もまた大きな問題だ。福岡県内で実際に起きた事例を紹介する。

 

▼危険行為の動画撮影

【内容】男子中学生が線路内に入り、レール上を歩く、寝そべるなどし、その様子を友人が撮影して投稿した。

【影響】鉄道会社職員が電車の緊急停車や安全点検、動画が出回り炎上したことへの苦情対応に追われた。

 

▼殺人予告

【内容】男子中学生がネット上のアプリを利用し、「通学中の子供を殺す」などと書き込んだ。

【影響】騒ぎが大きくなり、学校教諭が通学路の警戒や生徒の安全確認作業の対応に追われた。

 

▼爆破予告

【内容】高校生の男子生徒が、公的機関のブログに「爆破する」などと書き込んだ。

【影響】公的機関職員が周辺の警戒や不審物の検索などの対応に追われた。

 

 この3件の加害生徒はいずれも威力業務妨害で検挙。「好奇心でやってしまった」「こんなに大事になるとは思ってもいなかった」などと話したという。

“フィルタリング”の設定が有効

 未成年者がネット犯罪の被害者、加害者にならないためにはどうすればいいか。

 

 福岡県警少年課は「フィルタリングを確実に設定しておくこと」を対策の一つに挙げている。フィルタリングは、閲覧できるサイトやスマホの使用可能時間帯を制限できる機能のこと。携帯電話販売店やアプリのダウンロードなどにより設定できる。

 

 また県教育庁や政令市教委と協力して中高生を対象とした啓発教材を製作。県内で実際に起きたネット利用がきっかけとなった非行や被害の事例を再構成してドラマ化。その映像を収録したDVDと指導マニュアルをセットにして県内の各学校に配布した。このドラマはネット上でも公開。福岡県警少年課のホームページ(http://www.police.pref.fukuoka.jp/seian/shonen/net.html)などから閲覧できる。

 

 何よりも大切なのは、周りの大人が子供たちに日頃から指導していくことだ。福岡県警少年課は、非行面では「いたずらのつもりでやったことが犯罪になることも」「書き込みや画像が一度ネット上に流出すれば全てを削除することはできない」、被害面では「ネット上で知り合った相手を信用しない。個人情報を送らない」などを指導のポイントに挙げている。

スマホ・SNS「正しい使い方」の授業

つくば開成福岡高校 教育現場の取り組み

 福岡県警が製作した啓発教材は教育現場で活用されている。中でも「つくば開成福岡高校」(福岡市中央区天神)の取り組みが興味深い。映像を見た後、生徒同士でスマホやSNSの利便性やそこに潜む危険性など、善しあしを議論する時間を作っている。

 

 同校では「生活と経済」(2、3年生)「総合的な学習」(1年生)という科目があり、スマホやSNSの「正しい使い方」を授業に組み込んで教えている。「学力をつけることも大切ですが、物の見方、判断力を磨くための授業も必要です」と松永健一校長。ただ映像を見せるだけではなく、皆で話し合い、考えることで理解も深まるという。

 

 スマホやSNSによるトラブルを防ぐには、まず自分自身が判断を誤らないことが大切。各家庭はもちろん、学校でも教養の時間を増やしていくことが、子供たちを守ることにもつながるのではないだろうか。

 

◆つくば開成福岡高校 2015年に創立。登校日数は週1回や3、5回、集団型クラス(15人程度)や個別型(4~5人)クラスなど、学習スタイルを選択できる単位制・通信制の県認可私立校。生徒数260人。長所を伸ばし、個性を大切にする教育方針で、在学時に起業した卒業生もいる。また「24時間テレビ」のボランティア活動に参加するなど社会貢献にも力を入れている。福岡市中央区天神5の3の1。092-761-1663

 >公式サイト

福岡県下の少年サポートセンター

 福岡県警は県内5か所に少年の相談窓口「少年サポートセンター」を設置。専門知識を持つスタッフが常駐し、いじめや非行からの立ち直りなどの相談に応じ、助言や指導を行っている。

 

▽中央少年サポートセンター

 春日市原町3の1の7 福岡県福岡児童相談所3階 092-588-7830

▽福岡少年サポートセンター

 福岡市中央区地行浜2の1の28 福岡市こども総合相談センター5階 092-841-7830

▽北九州少年サポートセンター

 北九州市戸畑区汐井町1の6 ウェルとばた5階 093-881-7830

▽飯塚少年サポートセンター

 飯塚市飯塚14の67 イイヅカコミュニティセンター2階 0948-21-3751

▽久留米少年サポートセンター

 久留米市諏訪野町1830の6 えーるピア久留米3階 0942-30-7867