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(2018/4/5ほうち楽ナビ掲載)

ボンドアートの世界

世界で唯一 冨永ボンドさん

 世界でただ一人、木工用の接着剤を使って作品を描く画家がいる。冨永ボンドさん(35)、その人だ。ボンドアートとは一体どんなものなのだろう――。佐賀県多久市にあるアトリエ「Art Studio ボンドバ」を訪ねた。 (加藤 博之)

Art Studio ボンドバ 冨永ボンドさん
「アートに失敗はない」と話す冨永さん(アトリエ「Art Studio ボンドバ」で)

原色ふんだんに

 「何色がお好きですか」。そう聞かれて、アトリエの壁に飾られている作品を見上げた。赤や黄、青に緑。力強く、鮮やかな原色が目に飛び込んでくる。立体的な黒の線で縁取りされた色はどれも個性的で、それぞれに魅力があり、一つの色を選ぶのは難しかった。

 

 ボンドアート。その魅力は、自由度の高さにある。あらかじめ決められた構図や下書きはなく、まず水彩絵の具で思うままに描いていく。仕上げに、黒い塗料を混ぜた接着剤で縁取りをするのが特徴だ。180グラムの木工用接着剤を年間約1000本使用するという。「黒はどんな色でもつなぐことができる。一方で、それぞれの色をキャンバスの中で際立たせてくれます」。出来上がった作品に、正解はない。逆に言えば、失敗もない。描く人も見る人も、自分の好きなようにアートと向き合えばいいのだ。

 

 学校の授業などを除けば、冨永さんが初めて絵を描いたのは26歳の時。福岡市天神にあるクラブのイベントに出演したのがきっかけだった。元々デザインは好きだったが、専門的に絵を学んだことは一度もない。「デッサンも出来ないし、絵もへたくそ」と笑う。イベント出演にあたり、歌もうまくないし、絵も上手ではない。そんな中、ふと思いついたのが接着剤でアートを描いてみることだった。

 

人と人をつなぐ

 その接着剤が文字通り、人と人とをつなぐのだから面白いものだ。冨永さんは活躍の場を広げていく。音楽フェス、地域の祭り、商業施設、病院や福祉施設など、様々な場所で描いた。活動を続けていく中で、ニューヨークとパリのギャラリーと契約。海外でも作品が紹介されるまでになった。

 

「アートは手段」

 「アートは手段」だという。生涯をかけて取り組みたいことがあるからだ。それは、ボンドアートをセラピーとして精神医療の分野に生かすこと。今も年間60回、認知症や精神に障がいを持つ人を対象に、ボンドアートの体験会を開いている。そこで出会ったのは、純粋で真っすぐな作品の数々だった。

 

 「誰が描いても、失敗がなければ、優劣もない。自信を取り戻すきっかけになると思うんです」。冨永さんは今春、アートセラピーの研究者になるために、通信制の大学に入学した。

 

 冒頭の質問。迷う必要はなかった。思うがままに答えればよかったのだ。色がそうであるように、人もそれぞれに個性がある。人はどんな風に生きてもいい。どんな風に描いてもいいボンドアートが、そう言っているような気がした。

黒い塗料を混ぜた木工用接着剤で立体的に縁を取り、作品は完成する
黒い塗料を混ぜた木工用接着剤で立体的に縁を取り、作品は完成する

【Art Studio ボンドバ】

 アトリエはJR多久駅から歩いて10分ほど。作品に通底する創作のテーマは「つなぐ(接着する)」。モチーフは「人」だ。創作に没頭する作業自体が何より大切だと考える冨永さんは、これまで全ての作品を人前で描いてきた。毎月第4日曜日(午前11時~午後6時)はアトリエ解放日。毎週金曜日(午後8時~翌午前3時)はBARとしても営業している。多久市北多久町小侍703の21。095237-8646

 

 今春から始まったRKBラジオ「冨永ボンド アートレディオ」(毎週月曜午後8時15分~)と、NBCラジオ「冨永ボンドのRADIOボンドバ」(毎週土曜午後7時30分~)のパーソナリティーを務めている。

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