レジャー情報~熊本県~

(2019/2/7紙面掲載)

小説「草枕」の舞台を訪ねて

漱石の愛した風景

~熊本県玉名市の旅(下)~

 熊本県北部に位置する玉名市をめぐる旅。今年のNHK大河ドラマの主人公・金栗四三(かなくりしそう)ゆかりの地を訪ねた前回に続き、今週は夏目漱石の名作「草枕」の舞台となった天水地区などを紹介する。温泉や絶景、ラーメンなど、玉名の魅力を満喫した。(加藤 博之)

玉名市 天水 草枕温泉てんすい
夕日が有明海と島原半島をオレンジ色に染める

温泉からの絶景は最高

 オレンジ色に染まった夕景を眺めながら、こう考えた。夏目漱石はこの景色を見ながら、何を思ったのだろう――。漱石は、熊本で第五高等学校の教師をしていた1897年の大みそか、同僚と天水を訪ねている。後に、滞在した数日間の出来事を元に、小説「草枕」を執筆した。

 

 玉名市には、中心部に「玉名温泉」と天水に「小天温泉」があり、いずれも豊富な湧出量を誇る。無色透明でさらっとしており、癖がないので長湯に適している。保湿効果が高く湯冷めしにくいのが特徴で、いくつかの温泉に入る「湯めぐり」をする観光客も多い。

 

 今回は天水の「草枕温泉てんすい」に、ゆっくりとつかった。<山路を登りながら、こう考えた>で始まる「草枕」。<智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される(中略)兎角(とかく)に人の世は住みにくい>と続く。かの文豪も何かわずらわしいことから逃れ、ここで心身の疲れを癒やしたのだろうか。

 

 何かと住みにくい人の世なのは、120年前も今も、同じかもしれない。湯船につかっていると、日頃たまった心身の「コリ」が、ほぐれていくようだった。目の前には当時と変わらないであろう、有明海から島原半島へと続く絶景が広がっていた。

熊本県玉名市 前田家別邸 夏目漱石
漱石が宿泊した前田家別邸

漱石も泊まった前田家別邸

 温泉に入る前に、周辺を散策した。資料や映像で漱石の世界を再現した「草枕交流館」や、実際に宿泊した「前田家別邸」を訪ねた。ミカン畑に囲まれたのどかな風景の中を歩くと、入浴の前のほどよい運動になった。

 

 漱石が「桃源郷」と呼んだ天水。「草枕」を執筆したのは訪れた9年後、39歳の時だ。一気に書き上げたというから、余程、滞在した時のことが印象的だったのだろう。

 

 この地を訪れたのは初めてだったが、どこか懐かしさのようなものが感じられた。ゆっくりと沈んでいく夕日を見ながら、湯につかる。いつまでもこうしていたいと思える、ぜいたくな時間だった。

【草枕温泉てんすい】

 展望露天風呂のほかに、男湯につかる主人公の前にヒロイン那美が現れる浴場を再現した「草枕の湯」もある。大人500円、中学生以下200円、3歳以下無料。午前10時から午後9時。0968-82-4500

【草枕交流館】

 「草枕」に関する資料館で、小説の背景や前田家の歴史を紹介。小説の世界を再現した「草枕絵巻」(複製)や、山鹿灯籠師作の「前田家別邸の完全復元模型」などが展示されている。

 

【前田家別邸】

  熊本の名士前田案山子が客をもてなすために建てた別邸。段差を生かした特徴的なつくりで、半地下につくられた浴場や、離れも残されており、自由に見学できる。

 

 いずれも午前9時から午後5時。入場無料。水曜定休。問い合わせは草枕交流館0968-82-4511


熊本県玉名市 奥之院
梵鐘祈願で豪快に鐘を突く

人気のパワースポット 蓮華院誕生寺奥之院

世界一大きい鐘

 蓮華院誕生寺奥之院は市の北側、小岱山の中腹にある。居ずまいを正したくなる荘厳さと開放的な雰囲気を併せ持つ。ぜひ訪れたいパワースポットだ。

 

 「一願成就」の寺院で、葬儀などは行わず、願いごとをする参拝客が訪れる。境内にある大梵鐘「飛龍の鐘」は、直径約2・8メートル、高さ約4・5メートル、厚さ30センチ。重さは37・5トンと世界一の大きさを誇る。毎朝6時に13度、正午に7度突かれる。鐘の音は島原半島まで届くという。

 

写経や座禅体験も

 本堂となる「五重塔」は51・5メートルで日本で3番目の高さ。ここで写経や座禅の体験もできる。高さ13メートルの大仏や、雲仙普賢岳などが一望できる展望台もある。

 

 18万坪の境内ではシダレザクラ、シャクナゲ、イチョウ、モミジなど四季折々の景観を楽しめる。願いごとを皿に書いて、念じながら谷へ投げる「厄皿投げの場」もあり、ゆっくりと散策しながら満喫したい。様々なイベントも随時行われている。

 

 午前9時から午後5時。参詣料は大人200円、小人150円。問い合わせは0968-74-3533


熊本県玉名市 うろんころん
荒木直平商店は明治3年創業。季節の果物などを使った「高瀬の誉 飲む酢」は20種類以上あり、女性ファンが多い

【うろんころん 高瀬まちあるき】

 「うろんころん」とは熊本弁で、「ウロウロする」の意。かつて熊本県北の要衝として栄えた高瀬地区には、酢屋や酒屋、お菓子屋など多くの老舗が残る。

 

 古き時代の面影を残す商店街を地元の人と触れ合いながら歩くのが「うろんころん」。それぞれの店に歴史があり、商店主らとの会話を楽しみながら1店1店まわっていると、あっという間に時間が過ぎてしまう。ガイドツアーなどの問い合わせは玉名観光協会0968-72-5313

 

玉名ラーメン 千龍
市内にある「千龍」は見た目は濃厚だが、あっさりとした繊細な味だ。ボリューム満点の五目焼飯(700円)。1キロ弱あり、これで1人前

【玉名ラーメン】

 玉名のグルメと言えば、まず思い浮かぶのがラーメンだ。濃厚な豚骨スープは観光客にも人気。注文した時ではなく、店員がラーメンをテーブルに運んだ際に、焦がしニンニクを入れるかどうかを聞くのが特徴の一つ。

 

 市内11のラーメン店でつくる協議会は、入浴券とセットになった「玉名ラーメン&温泉手形」(2300円)を発売中。加盟店のうち3店でラーメンを食べることができ、玉名温泉「つかさの湯」の入浴券などが付いている。問い合わせは玉名ラーメン協議会事務局0968-82-5020

☆玉名市観光案内サイト タマてバコ☆
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