旅ゴコロ~鹿児島県~
  ※料金や営業時間等は紙面掲載時

(2018/3/22掲載)

花と渓谷と温泉のまち

鹿児島 垂水市

 鹿児島県大隅半島の北西部に位置する垂水市。海、山、渓谷など自然にあふれ、温泉や海の幸を思う存分堪能することが出来る。鹿児島市内からフェリーで約40分。訪れた人だけが味わえる「ここでしか出来ない体験」を求めて、「花と渓谷と温泉のまち」を旅した。 (加藤 博之)

鹿児島県垂水市 桜島
見る角度によって、その表情を変える桜島。左手には海潟港に浮かぶ江之島が見える
鹿児島県垂水市 森の駅たるみず
天然ラドン療養泉のサンドバス。サウナとはまた違った感覚で、デトックス効果も抜群だ

【癒】

日本屈指の含有量 天然ラドン療養泉

猿ヶ城温泉 森の駅たるみず

 澄み切った森の空気を、胸いっぱいに吸い込んだ。垂水港から車で約10分のところにある「森の駅たるみず」。高隈連山の麓にあるレジャー施設で、スリル満点の「ジップライン」や、ウェットスーツを着て渓流を下る「キャニオニング」など体験型の観光が楽しめ、夏休みは多くの家族連れでにぎわう。

 

 訪れた日は、あいにくの曇り空。体験型観光も魅力だったが、日本屈指の含有量を誇るラドン療養泉に入ると「疲れた体が信じられないくらいリフレッシュ出来る」と聞き、「エステ&スパ体験」をやってみた。

 

 まずはサンドバス体験。50度のラドン療養泉であらかじめ温められた直径3ミリほどのセラミックボールが、浴槽に敷き詰められている。天然鉱石を加工したもので、肩から足までが埋まるように、その中に横たわる。根っからのサウナ好き。砂むし風呂も経験したことはあるが、そのどちらとも、まったく違った。

 

 ドクン、ドクン。ほどなくして、心臓の鼓動に合わせて手足の先が脈打つような感覚になった。血液の循環がよくなったのが、ありありと感じられる。約15分の入浴だが、圧迫感や重さはそれほどない。体中から汗がわき出てきた。老廃物を体外に出すデトックス効果も抜群のようだ。

 

 ラドンの含有量は111ベクトル/キロ以上になると、「療養泉」と呼ばれる。猿ヶ城温泉のラドン療養泉は3140ベクトル/キロと含有量は九州一を誇り、痛風や関節リウマチなどに効果があるとされる。

 

 続いて、リンパマッサージ。サンドバスの後に受けると、よりその効果が増すという。エステと聞くと女性のものという印象だが、最近は体のメンテナンスやリフレッシュのために訪れる男性も増えてきているとのことだった。

 

 ゴクッ、ゴクッ。約2時間ほどですべての行程を終え、ペットボトルの水を一気に飲み干した。細胞の隅々まで行き渡っていくようだ。体中の水分が入れ替わったような爽快感があった。

 

 屋外に出ると、太陽が顔をのぞかせ、青い空が見えた。いろんなことを体験したようで、何もしていないような気もした。こんな風にのんびりする旅も悪くない。

 

 もう一度、思い切り森の空気を吸い込んだ。

【森の駅たるみず】

 家族で遊べるレジャー施設で、一度訪れたらやみつきになること間違いなしだ。往復で全長310メートルの「ジップライン」(1人1700円)、猿ヶ城渓谷を下る「キャニオニング」(大人6000円、小学生以下4000円)(夏季限定)のほか、「マス釣り体験」(1000円)なども楽しめる。天然ラドン療養泉は大人490円、小学生240円。「サンドバス」は3つの個室があり、1人1980円。「エステ&スパ」のコースは2000円から。宿泊コテージが8棟あり、1泊2食で大人6500円(土、日、祝、祝前日は大人7500円。年末年始などは特別料金)。(問)0120-901-917

鹿児島県垂水市 薩摩明治村
脂の乗ったブリを豪快に鍋に入れて食べる

【食】

海の幸満喫 広がる大パノラマ

【薩摩明治村】

 垂水を訪れたなら、海の幸を満喫しない訳にはいかない。今回は宿泊した薩摩明治村で夕食に「垂水産ぶりの寄せ鍋コース」を堪能した。ブリ、野菜の食べ放題と飲み放題が付いて、1泊2食で大人6500円(土、日、祝、祝前日は大人7500円)。脂の乗ったブリからうま味が鍋にしみ出して、垂水産の芋焼酎が進んだ。

 

 かけ流し天然温泉の露天風呂からは桜島の雄大な景色が楽しめる。歩いてすぐの展望所からは、鹿児島湾や開聞岳も一望できる大パノラマが広がる。

 (問)0120-374-026

鹿児島県垂水市 江之島
NHK大河ドラマ「西郷どん」の冒頭シーンに登場する江之島

【眺】

西郷どんに登場

【江之島】

 南北約500メートル、東西約200メートル、標高56メートルの海潟港に浮かぶ小島。NHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」を見ている人なら、この写真に思い当たるところがあるかもしれない。ドラマ冒頭のテーマ音楽が流れるシーンの最後の方に、江之島の向こう側に桜島がそびえる映像が登場する。

 

 この角度からの桜島は、どこか女性的で優しいたたずまいだ。露天風呂から江之島と桜島が一望できる宿「江洋館」の堀之内順さんは「雨上がりの朝などにはとても近くに感じられ、迫力があります」と話す。西郷どんゆかりの地をめぐるなら、ちょっと足を伸ばしてここからの景色を楽しむのもいいかもしれない。

鹿児島県垂水市 薩摩ボタン
絵付けと焼き付けの行程を最低でも5回は行う。一つ一つ丁寧に手作業で作られる

【技】

薩摩ボタン

 きめ細かに絵付けされた、鮮やかな色合いに、目を奪われた。ボタンというよりもむしろ芸術作品と言っていいだろう。薩摩焼「白薩摩」の上に広がる小さな世界には、花鳥風月など様々なものが描かれている。

 

 江戸末期には、薩摩藩の倒幕運動に必要な外資を得るために作られていたとも言われている。一時歴史が途絶えていたが、絵付け師の室田志保さんが復活させた。垂水市の大野地区にあるアトリエで、一つ一つ丁寧に作られた作品の数々は見事の一言だ。(問)「絵付ヶ舎 薩摩志史」0994-32-7209

鹿児島県垂水市 新タマネギ
みずみずしさが特長の垂水の新タマネギ。サラダにすると、そのうま味が実感できる

【穫】

垂水の新タマネギ

 「旬」を迎えたタマネギ畑を訪れた。茎の折れ曲がっているのが、収穫のタイミングだという。手で触って、大きさを確認してから収穫する。とれたてを「そのまま食べてみて」と言われ、土が付いたままだったが、皮をむいてかぶりついた。「うまい!」。甘みとみずみずしさがあって、まるで果物のようだった。「収穫体験ツアー」は人気で、すぐに定員に達するというのも、よく分かる気がした。

 

鹿児島県垂水市 とんとこ漁
とんとこ海老のスープは深海エビ特有の甘みが特長

【産】

伝統漁法で収穫 深海エビのスープ

 お土産には、ナミクダヒゲエビを天日干しして、うま味を凝縮させた「とんとこ海老のスープ」を選んだ。そのまま飲むだけでなく、料理にも使えるとのこと。江戸時代から伝わる「とんとこ漁」と呼ばれる独特の底引き網漁で収穫する。水深が200メートル以上あり、ミネラル豊富な鹿児島湾だからこその特産品。深海エビ特有の甘みが特長だ。

 (問)たるみず畑0994-45-5580


【スポーツ合宿】

 垂水市は高校や大学生のスポーツ合宿にも力を入れており、高校サッカーの強豪校・鹿児島実業などが例年合宿を行っている。温泉とおいしい食事はスポーツマンにとってはうれしい限り。ハードな合宿を行うことで、垂水は学生らにとっても思い出深い場所となる。卒業後に、プライベートで家族や友人と訪れるリピーターも多い。

【交通手段】

 鹿児島市内の鴨池港と垂水港を結ぶフェリーで約40分。1日25便。中学生以上480円、中学生未満240円。鴨池営業所099-256-1761、垂水営業所0994-32-0001


垂水市のイメージキャラクター「たるたる」
垂水市のイメージキャラクター「たるたる」


(2018/1/25掲載)

桜島ゆるり

「15分の船旅」で魅力新発見!

鹿児島の旅(下)

 鹿児島をめぐる旅の2回目。西郷(せご)どんゆかりの地を散策した前回に続き、今回はフェリーに乗って桜島に渡った。言わずと知れた鹿児島のシンボル。雄大な自然、シラス台地が育む「食」や、活火山ならではの温泉を堪能した。 加藤 博之

桜島
湯之平展望所からは、たけだけしい桜島を見ることができる

今が食べ頃「桜島大根」

 約15分の優雅な航海だ。鹿児島港を出て、桜島に向かう。潮風が心地いい。船上のあちこちで、カップルや家族連れが写真を撮りながら風景を楽しんでいた。何度も鹿児島に来ているが、桜島に渡るのは初めて。次第に眼前に迫ってくる雄大な姿に、どんな島なんだろうと期待が膨らんだ。

 

 1周約36キロ。世界有数の活火山である桜島には、二つの世界一がある。一つはは、その大きさでギネスブックにも認定されている「桜島大根」だ。ちょうど食べ頃を迎えている。島に到着してすぐに国民宿舎レインボー桜島が企画している「収穫体験ツアー」に参加した。

 

 畑に着くと、一面に桜島大根が植わっていた。葉っぱの部分を束ね、腰を据えて引き抜くのがコツという。「えいっ」。グッと手応えが感じられた。ギネス級ではないものの、なかなか重い。大地の恵みを収穫した実感があった。

桜島大根
桜島大根は今が旬。甘みがあり、煮崩れしにくいのが特長だ

香り高い風味 桜島小みかん

 もう一つの世界一は、「桜島小みかん」だ。手のひらにすっぽり隠れるほどで、最も小さいと言われている。香り高い風味が特長だ。「さくらじまの食と農の実行委員会」会長の村山利清さん(71)は堆肥に海藻を使っている。山から流れ出た栄養がミネラル豊富な海藻を育て、それがまた山に還元される仕組み。食べてみると、濃厚な甘みが口いっぱいに広がった。

 

 最後に「湯之平展望所」に向かった。火口から半径2キロは人が立ち入れないため、ここが桜島を最も近くから見ることが出来る地点となる。火口付近のむき出しの山肌や火山岩はもちろん、錦江湾を望む遠景も素晴らしかった。

 

 宿泊は「レインボー桜島」。ゆっくりと「マグマ温泉」の露天風呂につかった。夕食に、昼間収穫した桜島大根を使った「ブリ大根」が出た。錦江湾でとれたブリのうまみが、ダイコンに染み込んでいる。ほのかな甘みと相まって、桜島産の焼酎が進んだ。

 

 対岸に鹿児島の夜景が広がる。「たいていの人は対岸から桜島を見て満足するんです」。そう話すのは、「レインボー桜島」の篠原臣さん。確かにそれだけでは、もったいないような気がした。

 

 桜島大根のことも知ってはいたが、実際に収穫して、食べてみて、新たな発見があった。桜島には行ってみないと分からない魅力がある。そう感じた旅だった。

桜島小みかん
濃厚な甘みがある桜島小みかん

【国民宿舎レインボー桜島】

 季節や時間によって、ここから見る桜島が七色に変化することから、名付けられた。錦江湾でとれた魚介類や黒豚を使った料理は絶品で、様々な宿泊プランがある。体験プランは、「桜島大根収穫体験」のほか「温泉掘り体験」など。地下1000メートルから湧き出る「桜島マグマ温泉」も人気。(問)099-293-2323

【桜島フェリー】

 鹿児島市営で、6隻を保有し、24時間運航している。船内にある「やぶ金」のうどんは名物になっている。運賃は大人160円、小児80円。約50分かけて錦江湾内をまわる1日1便の「よりみちクルーズ」(大人500円、小児250円)も人気を集めている。



(2018/1/18掲載)

西郷どん 故郷をぶらり

NHK大河ドラマで注目度アップ

鹿児島の旅(上)

 明治維新150年の今年、西郷隆盛を描いたNHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」が放送されるなど、鹿児島が注目を集めている。桜島、錦江湾などの豊かな自然や、黒豚や新鮮な魚介類などの「食」も楽しめる観光スポットだ。その魅力を2週にわたって紹介。今週は、まち歩きガイド「薩摩こんしぇるじゅ。」と一緒に散策した西郷どんゆかりの地を案内しよう。 加藤 博之

薩摩こんしぇるじゅ。
意外と知られていない情報もガイドしてくれる「薩摩こんしぇるじゅ。」
西郷隆盛銅像

大久保利通の銅像 鹿児島中央駅近く

 その視線の先に、何を見据えているのだろうか。西郷隆盛と並ぶ維新の雄・大久保利通の銅像は、JR鹿児島中央駅から加治屋町方面へ5分ほど歩いた所にある。立派なひげ、真一文字に結んだ口。さっそうとたたずむ様子からは、実直そうな人柄がうかがえる。

 

 「大久保はポケットマネーを国のために使い、日本の未来をいいものにしたいと思っていたそうです」。そう話すのは、今回案内してくれた「薩摩こんしぇるじゅ。」の大橋麻紀(37)さんと山城優子さん(32)。意外に知られていない情報をガイドに盛り込んでくれるのが魅力だ。

 

維新ふるさとの道通り「誕生の地へ」

 正直言って、大久保のことをあまり詳しく知らなかった。西郷や坂本龍馬といった志士に比べ、どうしても印象が薄い。それでも今回、大橋さんらの話を聞きながらじっとその像を眺めていると、人となりが浮かんでくるような気がするから不思議だ。この人はどんな人生を歩んだのだろう。ドラマではどんな風に描かれるのだろう。次第に、興味が湧いてきた。

 

 さらに、甲突川沿いに歴史ロード「維新ふるさとの道」を歩く。しばらくすると「西郷隆盛誕生の地」に着いた。下級藩士だった西郷と大久保は生家も近い。2人は薩摩独特の「郷中(ごじゅう)教育」を受けながら成長していく。共鳴し、刺激し合い、時に反目し、激動の時代を生き抜いた。そんな2人を対比させながら、維新の舞台を歩くのも楽しみ方の一つだろう。

 

 西郷どんが愛したふるさとは、至る所に銅像や史跡があり、歴史ロマンにあふれていた。ゆかりの地を巡った後にドラマを見てもいいし、その逆もまたよし。とにかく一度、足を運んでみてはいかがだろう。

      ◇

 次週1月25日付けは、西郷ら維新の志士が眺めた鹿児島のシンボル「桜島」の魅力を紹介する。

【大久保利通像】

 高さ4.3メートル。ここを訪れたら、ぜひ像の後ろも見てほしい。右の足元に、暗殺された時に一緒に殺された御者と馬が確認できる。家族同然だったことから像が建てられる際に一緒に彫られたという。建てられたのは1979年(昭和54年)。城山公園近くにある西郷隆盛像が建てられた42年後だったことからも、当地での両雄の人気がうかがえる。