旅ゴコロ~長崎県~

(2017/10/26掲載)

小値賀島のおもてなし

 東シナ海に浮かぶ小値賀(おぢか)島は、長崎県五島列島の北に位置する。人口約2500人の小さな島には、美しい海岸線や手つかずの自然が多く残る。コンビニエンスストアもないこの島の一番の魅力は、ここで暮らす人々の温かみ。遣唐使の時代から多くの船が行き来する交通の要衝だったこともあり、他者をもてなす風土が育まれてきたのだろう。古き良き日本が感じられる「おもてなしの島」を訪ねた。 加藤 博之

小値賀島 民泊 食卓
これぞ漁師の食卓。鮮度抜群の魚が食べられる

民泊で里帰り気分

 食卓をたくさんの料理が彩っていた。ハガツオ、ハマチ、イサキなどの新鮮な刺し身。さらにアジフライや、畑で取れたばかりの野菜の天ぷら、自家製のゴマ豆腐。小値賀島で漁業を営む宇戸正一郎さん(73)、靖代さん(72)夫妻の家で、夕食をごちそうになった。食べきれないほどの料理を並べるのが「おぢか流」のおもてなしだ。

 

 佐世保港から高速船「シークイーン」で約1時間30分。西へ約70キロに位置する小値賀島は、島の暮らしを味わえる「民泊」や、魚釣りなど体験型の観光などに力を入れている。おぢかアイランドツーリズム協会の前田敏幸さんは「島に昔からあったものを観光素材として生かしています。日本各地にあった昔ながらの暮らしを楽しんでほしい」と話す。

 

 宇戸さん夫妻も、観光客を受け入れるようになって11年になる。靖代さんは「いろんな方が来てくれるのが楽しくて今まで続けてこれました」と笑う。「そこのダイコンをおろして、こっちの皿に盛りつけてちょうだい」。そんな会話を交わしながら夕飯の準備を手伝っていると、里帰りしたような気分になった。

 

 本業では、ヒラメ、カワハギ、イサキと、季節によってとれる魚が変わる。この日は、偶然刺し網にかかっていたツバメウオの煮付けにありつけた。普段、市場に並ぶことはない魚という。これも「民泊」ならではだろう。

小値賀島 夕日
美しい自然が多く残されている。西の海に沈む夕日もその一つ

小魚釣り&料理づくり体験

 シーカヤックや魚釣りなど体験型プログラムも多彩。今回は「小魚釣り&料理づくり体験」に挑んだ。釣りの経験がない子どもや女性にも人気だという。潮風を感じながら、防波堤で糸を垂らす。小さなアジを数匹釣り上げることが出来た。釣った魚は教えてもらいながら、自分でさばく。お皿に盛りつけたら、さあ乾杯だ。島での暮らしのこと、かつて栄えたアワビ漁の話、様々な話題に花が咲く。焼酎を傾けながら、話が尽きることはなかった。

 

 翌日。帰りの船を待っていると、靖代さんが港まで見送りに来てくれた。「また、来てね」。人のおおらかさや温かみに触れる、こんな旅もいいな。海風を感じながら、そう思った。

【民泊】1泊2食に、一つの体験プログラムが付いて8000円。

 

【古民家ステイ】島内に6軒あり1人1万2500円から。利用は6人まで。料金は季節や利用人数、棟によって異なる。自炊も可能。

 

【小魚釣り・料理づくり体験】1人5000円。午後4時から同8時頃。道具や餌は準備してくれる。

 

【交通】博多港や佐世保港からフェリーや高速船で。島内にはレンタカーやレンタサイクルがある。

 宿泊や体験プログラムの問い合わせは「おぢかアイランドツーリズム協会」0959-56-2646まで。

野崎島 旧野首教会

【野崎島】

 小値賀島から町営船で約20分の所にある。透き通るような海を見下ろす丘に、1908年に建てられた旧野首教会=写真=がある。段々畑にたたずむレンガ造りの天主堂からは、かつて潜伏キリシタンの集落があった名残りが感じられる。「野崎島の集落跡」は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」としてユネスコの世界遺産暫定リストに載っており、来年7月の登録を目指している。約400頭の野生のシカが生息する。

【晋弘舎活版印刷所】

 創業は約100年。昔ながらの活版印刷を続けている。ここで印刷された町営船の切符や名刺などからはカラーの高速印刷機にはない、ぬくもりが感じられる。島で生まれ育った4代目の横山桃子さん(29)は「いいものを残して、その良さを発信していきたい。小値賀の一番の魅力は人です」と話す。事前に連絡して、作業中でなければ、印刷所内を見学することができる。(問)095956-2011

ほうち楽ナビ
旅ゴコロ~長崎県~
旅ゴコロ~熊本県~
旅ゴコロ~鹿児島県~