【フルコンタクト空手】多田成慶 志和ひかる 網川来夢 栄冠つかむ/新極真会アジア大会

第1回アジアフルコンタクト空手大会

マレーシア決戦 福岡支部躍動

 福岡支部勢が大活躍--。「第1回アジアフルコンタクト空手大会」は8日にマレーシアの首都クアラルンプールで開かれた。軽量級、中量級、軽重量級、重量級の男女各4部門に、30の国と地域から166人がエントリーして熱戦を繰り広げた。男子7人、女子7人が出場した日本勢は7部門で優勝を飾る健闘を見せた。福岡支部からは多田成慶、志和ひかる、網川来夢の3人が出場し、それぞれの階級でアジアチャンピオンに輝いた。

大活躍の福岡支部の3人。(左から)志和ひかる、多田成慶、網川来夢

多田成慶 初の海外大会で決勝圧勝

決勝で得意の下段蹴りを放つ多田。一戦ごとに力を付けアジア王者に

◆男子軽重量級◆

 積極果敢に前に出た。気迫のこもった多田の攻勢に、パキスタンのウサマ・アリフが思わず後退した。「勝ったと思いました」。判定5-0の圧勝。拍手と歓声の中で「今までで一番うれしいです」。アジア王者となった19歳は、喜びを隠さなかった。

 一戦一戦成長した。一番の難所だったのが、同じ日本の吉沢穂高との準決勝だろう。過去一度の対戦では敗れており、戦前の予想も吉沢有利。しかし多田は一歩も引かなかった。「相手の蹴りが強くて心が折れそうになったけれど、何とか粘ろうと思った」。本戦で決着がつかず、延長へ。得意の下段蹴りで攻勢に転じ、3-0の判定で勝利した。

吐き気に頭痛 昼寝で精気取り戻す

 初めての海外の大会。いつもと違う環境にとまどった。緊張からか初戦の前に吐き気をもよおした。準々決勝を勝った後には頭痛に悩まされた。しかし、準決勝まで時間があったことが幸いした。試合間の時間の使い方はそれぞれだが、多田は昼寝を選択した。「少し寝ていたら回復しました」。うつろだった目は、精気を取り戻していた。

 海外の大会を勝ち抜くには、こういったずぶとさも必要なのだろう。準決勝で難敵を破り、決勝に臨む多田の表情は自信に満ちていた。「吉沢選手の気持ちも宿っていたと思う」。決勝の結果は必然だった。

 社会人として働きながら道場に通い、稽古に打ち込む日々を送る。職場の仲間にもいい報告が出来そうだ。「これどうやって飛行機で持って帰るんですかね」。大きなトロフィーを手に、照れたようにはにかんだ。


志和ひかる 再延長制し涙

志和ひかる 再延長制し涙

◆女子軽量級◆

 志和の目に涙があふれた。本戦、延長と決着がつかず、再延長にもつれ込んだ決勝。同じ日本の宇都宮美咲との一進一退の攻防を制した。判定は3-2。「最後は気持ちの強さが勝敗を分けたと思う」。誇らしげに胸を張った。

 お互いに持ち味を出し切った。身長が152センチの志和より10センチ高い宇都宮は、突き、蹴りで圧力をかけてくる。志和も負けじと、ステップでかわしつつ、突きと下段の蹴りを返す。終始、近い間合いでの攻防は、決勝にふさわしい熱戦。最後は手数で上回った志和が僅差で頂点に立った。

 この大会にかけていた。道場以外でも「ここで勝つという感情以外は一切排除していた」という。すべてが終わった瞬間、張り詰めていたものが緩んだのだろう。感情があふれだした。それでも、すぐに笑顔に変わり「ほっとしました。支えてくれたいろいろな人に感謝したいです」と振り返った。

この大会にかけていた志和が気迫の攻めを見せた

南原朱里の言葉糧に

 8月のドリームフェスティバル高校女子中量級の決勝で敗れた。失意の志和に声をかけたのは、11月の世界大会に女子日本代表として出場する南原朱里だった。いつも指導してくれる先輩は言った。「この負けに意味があったと思えるようにしないといけない」。この一言で前を向けた。今回は、敗戦の悔しさを力に変えた優勝でもあった。

 6月の昇段審査で初段に。過酷な10人組手の経験も最も苦しかった決勝で支えとなった。「後輩たちに尊敬され、憧れられるような存在になりたい」。アジアVの自信を胸に、さらに稽古に精進するつもりだ。


網川来夢 誕生日前日の快挙

◆女子中量級◆

外国人相手にもパワー負けしなかった網川が頂点に立った

 自身への最高のプレゼントとなった。網川にとって、大会翌日の9日は16回目の誕生日。「(志和と)2人での優勝が目標だった。本当にうれしい」。トロフィーを手に喜びをかみしめた。

 決勝戦の直前の試合で、軽量級の志和が優勝を決めた。小さい頃から共に鍛錬してきた1学年上の先輩が目の前で歓喜の涙を流した。闘志に、火がついた。「あれで気持ちが入り直しました」。口元が一段と引き締まった。

 相手は強豪国・カザフスタンのイオアナ・ベリク。パワーのある相手に対し、得意の膝蹴りを上段、中段へと繰り出していく。長い手足を駆使した最も得意とするこの技を、大会に向けさらに磨いてきた。

 本戦では決着がつかず、延長へ。序盤の蹴りが次第に効いてきたのか、網川がじわりと前に出る。「ここで決めようと思った」。試合を決めるべく、一気に攻め立てた。判定5-0の勝利だった。

亀山真のマンツーマン指導に感謝

 対策が実った。外国勢との対戦に向け、体力強化に取り組んできた。道場では、11月の世界大会日本代表の亀山真がマンツーマンで稽古をつけてくれた。「ずっと練習に付き合ってくれて。亀山先生に一番に喜びを伝えたい」と感謝した。

 6歳で始めた空手。その魅力を「優勝した時にしか見ることのできない景色があるから」と話す。5月に大阪で開かれたJFKO全日本大会で8強。今回が2度目の一般の試合だったが一気にアジアの頂点まで駆け上がった。ヒロインの前には、最高の景色が広がっていた。


◆各部門の優勝者◆

…男 子…
▼重量級 ウラジミール・アルチュシン(カザフスタン)
▼軽重量級 多田成慶(日本)
▼中量級 飯野駿(同)
▼軽量級 野邑一心(同)

…女 子…
▼重量級 横山紀子(日本)
▼軽重量級 目代結菜(同)
▼中量級 網川来夢(同)
▼軽量級 志和ひかる(同)


世界に広がる新極真会

緑健児代表のセミナーには約100人が参加。元世界王者による稽古に、参加者は真剣な表情で汗を流した

昇段審査会やセミナー

 記念となる第1回アジア大会は、国際色豊かに行われ、大いに盛り上がった。会場には、様々な言語による声援が飛び交い、試合後にはお互いの健闘をたたえ合う姿が多く見られた。

 そんな中でも、14選手を派遣し男女合わせて7階級を制した新極真会の活躍は光った。会員数は現在、101か国10万人になる。緑健児代表をはじめ、小林功、三好一男副代表、小井泰三事務局長らは選手団とともに現地を訪れ、各国の支部長らと交流を深めた。

 試合以外でも、アジア地区支部長会議、審判講習会、緑健児代表によるセミナー、さよならパーティーなどが開かれ、親睦を図った。また、アジア地区昇段審査会も行われ、型や組手に臨み、17人がそれぞれの段や級に昇格した。

 緑健児代表は「2年に一度、マレーシアで開かれることも決まっています。大会が根付いて、アジアのレベルがさらに上がっていくことを願っています」と大会を振り返った。

(2019/9/20紙面掲載)

関連記事

過去記事(月別)

ページ上部へ戻る