【フルコンタクト空手】南原朱里 「気持ち」取り戻し 新たな一歩へ~世界女王が語る今

“空白期間” 自己見つめ直す

 東京五輪の延期など、スポーツ界にも大きな影響を及ぼしている新型コロナウイルス。新極真会では、全国の各道場でようやく稽古が再開されるなど、徐々に「いつもの光景」を取り戻しつつある。ただ、5月に開催予定だった「全世界フルコンタクト空手道選手権」に続き、10月に行われるはずだった「全日本空手道選手権大会」の延期が決まった。目標とする試合がなく、とまどいを隠せない選手も多い。そんな中、昨年の世界大会を制した南原朱里(21)は今、どう空手と向き合い、日々の稽古に取り組んでいるのか。現在の心境を話してくれた。(聞き手、構成=加藤博之)

階級別の世界王者を決める来年の「全世界フルコンタクト空手道選手権」に向け、南原が始動

全世界フルコン大会延期

 新型コロナウイルスの感染拡大で、道場の臨時休館や予定されていた主要大会が相次いで延期や中止となった。5月に大阪で開かれるはずだった「全世界フルコンタクト空手道選手権」も1年後に延期された。全世界フルコンタクト空手道連盟(WFKO)が主催する流派を超えた記念すべき第1回大会で、直接打撃空手の男女の階級別王者を決めるはずだった。南原は女子中量級の日本代表に選ばれていた。

 「昨年の世界大会の後に少しゆっくりして、そろそろ(大会に向けて)上げていこうかな、というところで中止が決まって。でも落ち込むんじゃなくて、それを逆にプラスに捉えようと思いました」

 実は、燃え尽き症候群に陥っていた。世界チャンピオンになることは、空手を始めた頃からずっと目標だった。五輪の金メダリストなど、長年の夢を成し遂げたトップアスリートがそういう状態になることはまれにある。

 「今だから言えるけど、世界大会の後、スイッチ入れようと思っても、気持ちが100にならなかった。脳や理屈では分かっていても、頑張れるかなと不安もあって…。そんな中で、5月の階級別世界大会が1年後に延期なったことで、いろんなことを考える時間が出来ました」

こみ上げる周囲への感謝

 コロナの影響で道場が臨時休館となり、生徒に教えることも、自身の稽古もままならない。南原はしかし、この“空白期間”を、自身を見つめ直す大切な時間にあてた。

 「試合が出来るのも練習が出来るのも、当たり前のことじゃない。師範をはじめ周りの支えてくれる方たちがいたから。そのありがたさが分かった。しっかり恩返ししていきたいと思いました」

福岡本部道場での稽古にも熱がこもった

進化しないといけない

 感謝の気持ちを改めてかみしめた時、もう1回、さあ行こうと思えた。常々話している、空手にとって一番大事な「気持ち」を取り戻した瞬間だった。来年の階級別世界大会に向けて、新たな一歩を踏み出した。そこでは、世界中の強豪が「打倒・南原」を掲げ立ち向かってくる。

 「進化しないといけない。5年前に世界大会で準優勝した時は、重圧で次の年に負け続けた。勝たないといけないと思い過ぎて。経験も積めているし、あの時とは変わっていると思う」

 6月からは週2回、福岡市内にある高地トレーニングスタジオ「ハイアルチ」に本格的に通い始めた。心肺機能を高め、スタミナ強化が目的だ。

 「昨年の世界大会で優勝した時、お父さんから『おめでとう』という言葉をかけてもらったんです。それまでは、どんな大会に勝っても『おめでとう』と言ってもらったことはなかったんですけど。一緒に目標にして頑張ってきたからうれしかった」

 言動や立ち居振る舞いも、すっかり女王のそれらしくなった。頂点からの眺めを知ったことで、南原はさらに強くなった。この先、道着を脱ぐ日まで、世界女王の称号は誰にも渡す気はない。


高地トレで鍛える!! 「ハイアルチ薬院」

ハイアルチでのトレーニングに「スタミナが断然付いていると思う」と手応え

3500メートル環境も設定

 南原が通う福岡市中央区の高地トレーニングスタジオ「ハイアルチ薬院」。標高約2500~2800メートルと同じ環境下でトレーニングすることにより、平地に比べ、より高い運動効果が得られるのが特長で、プロサッカー選手の槙野智章(浦和)など、利用しているトップアスリートは多い。薬院スタジオには、さらに酸素濃度を低く設定した約3500メートルの高地状態の筋トレルームなど、最先端のトレーニング機器がある。

(2020/7/26紙面掲載)

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