【フルコンタクト空手】多田成慶 無欲の挑戦 6位入賞快進撃/新極真会全日本大会
- 2020/11/29
- 新極真会

第52回全日本空手道選手権大会 11月21、22日/東京・ベルサール六本木
福岡支部11人 大舞台で奮闘
フルコンタクト空手の男女の日本一を決める「第52回全日本空手道選手権大会」(新極真会主催)は21、22の両日、東京のベルサール六本木で開かれた。新型コロナウイルス感染拡大防止のため初めて無観客で行われ、男子65人、女子37人が出場した。全国で最多となる男女合わせて11人が参戦した福岡支部では、江口雄智(24)がベスト4に進出。4位入賞を果たした。強豪を次々と下し快進撃を見せた多田成慶(20)が6位入賞し敢闘賞を受賞した。女子は藤原桃萌(22)が8強入り。優勝は男子が入来建武(25・東京城南川崎支部)、女子が久保田千尋(24・久保田道場)だった。

多田成慶 無欲の挑戦 6位入賞快進撃
初戦一本勝ちで勢い
会場の空気が変わった。茶帯の多田が黒帯の強豪を次々と打ち破っていく。誰だ、あいつ? 全国区ではまだあまり名が知られていない若武者が、ベスト8進出。周囲も驚く活躍に「こんなに勝ち上がれるとは思っていませんでした」。最高の笑顔で振り返った。
初戦で佐野孝太(東京城南川崎支部)に鉤突きで一本勝ちし、勢いに乗った。次戦は森田奈男樹(宮本道場)。大会前からずっと照準を絞っていた一戦に最高の形で臨んだ。過去に敗れていた相手だが、その時の多田とは違った。突き、得意の下段回し蹴りで攻め立て、優位に試合を進めた。
試合前、セコンドの山野翔平から声をかけられていた。「いつもの成慶で行けよ」。延長での決着も視野に入れていたが、この言葉を思い出した。一気に決めよう――。さらにギアを上げ本戦5-0の判定で決着。雪辱を果たした。
これまでは試合に入り込み過ぎて、視野が狭くなることもあったが、今回は違った。組手の最中に時計を確認する余裕もあり、セコンドのアドバイスを忠実に守った。大会に向け、しっかりと稽古を積めたことでスタミナ面の不安がなかったことも大きかった。

V候補と互角の戦い
勢いそのままに、4回戦では元福岡支部の強豪・越智純貴(沖縄支部)を破る金星。準優勝で加藤大喜(愛知山本道場)に延長で敗れたものの、本戦では1-0と優位に立った。V候補と互角に渡り合うことで、多田ここにありを示した。
緑健児新極真会代表も「頑張ったなと声をかけてあげたい」と、その名を挙げて健闘をたたえた。「もっともっと強くなりたいと思いました」。試合を振り返るその表情は、自信に満ちていた。

江口雄智 意地の4強
右足ダメージ抱えるも3位決定戦臨む
江口雄智は、3位決定戦の場に姿を見せた。口を真一文字に結んで、立っていた。準決勝を終えてから30分。歩けないほどのダメージを受けた右足は限界だった。「棄権とかは全く考えなかった。足が折れてもいいくらいの気持ち」。戦うべき相手が待っている以上、逃げる訳にはいかない。空手家としての誇りだった。
順調に勝ち上がった。「優勝するつもりで臨んでいた」。2回戦、3回戦と勝利。4回戦では四国の雄・三上和久(愛媛支部)を圧倒した。迎えた準々決勝。相手は福地勇人(白蓮会館)。階級別の日本王者を決めるJFKOの中量級を制したこともある実力者だ。
一進一退の攻防。江口が圧力をかけようとするが、福地もうまく足を使う。本戦、延長、再延長と全て0-0。体重判定でも決着がつかず最終延長に。残り30秒。江口は懸命に突きと蹴りを繰り出した。福岡支部の、いや新極真会としての思いも背負っていた。旗判定4-1。最後は他流派を自分のブロックから絶対に勝ち上がらせないという気持ちがわずかに上回った。
激闘の代償大きく
しかし、白星の代償は大きかった。試合を重ねるにつれダメージも蓄積し、体は悲鳴を上げていた。準決勝で、優勝した入来に0-5の判定で敗れた。
ベスト8の壁を破り、初めての4強入り。頂点まであと2つ届かなかった。「悔しい。ただただ、悔しい」。そう絞り出した後に続けた。「(試合では)練習したことしか出せないので」。稽古した分だけ強くなれる。ならば、この悔しさをバネにすればいい。進むべき道は自ら切り開いて行く。

藤原桃萌 悔しい8強
悔しいベスト8だ。V候補の一人として臨んだ藤原桃萌=写真=は準々決勝で水谷恋(久保田道場)に敗れ、「他流派に負けたくなかった。申し訳ない」と悔しがった。一気に本戦で決めに行ったが旗判定2―1で決着がつかず、延長で逆転を許した。突き、蹴り、一つ一つの精度を高めていかないと」と次を見据えた。
(2020/11/28紙面掲載)
※11月28日の新聞紙面では福岡支部の全出場選手の戦いぶりを写真つきで紹介しています<バックナンバーお買い求め>