特集

(2019/7/19紙面掲載)

ネット非行 犯罪被害から子供たちを守ろう

SNSトラブルを未然に防ぐため

 今年前半は飲食店のアルバイト店員による交流サイト(SNS)への悪ふざけ動画投稿がネット上で拡散され、社会問題となった。こうした問題行動だけではなく、SNSへの書き込みがきっかけとなった揉め事や犯罪被害に巻き込まれたりといったことも後を絶たない。ネット上のトラブルを未然に防ぎ、子供たちを守るため、大人が知っておくべきことは何か。夏休みを前に、福岡県警少年課など関係機関に聞いた。 (企画/スポーツ報知西部本社 協力/福岡県警少年課)

相次ぐ不適切動画の投稿。悪ふざけのつもりが大きな影響を及ぼすことも(イメージ)
相次ぐ不適切動画の投稿。悪ふざけのつもりが大きな影響を及ぼすことも(イメージ)

「不適切動画」社会問題に発展

  大手飲食チェーンの店舗でアルバイト店員による不適切な動画投稿は「バイトテロ」と呼ばれ問題になったが、今もなお、悪ふざけ動画の投稿がネット上で相次いでいる。また悪質ユーザーにだまされたり、性的被害を受けたというニュースも変わらず多い。

 

 投稿された悪ふざけ動画をテレビ番組などで見た人の大半は「けしからん」「ばかじゃないの」と思っただろう。しかし、彼らを批判、罵倒するだけではこの問題は防げない。自分の子供や孫が「ネット非行」に走ったり、被害に巻き込まれたらどうなるのだろうか? 他人事と思わず、身近に起こりうる問題として向き合う必要がある。

 

検挙された事例

 では、周りの大人はどうすればいいのか。福岡県警少年課は「子供たちがどのようにネットを利用して非行に走ったり、被害に遭ったりしているのか、現状を知ってもらいたい」。まずはネット非行で検挙された事例を紹介する

 

▼線路内での悪ふざけを投稿

【内容】中学生の男子生徒が悪ふざけで線路内に入ってレールの上を歩く、寝そべるなどして、その様子を友人がスマホで撮影して投稿した。

【罪名】鉄道会社が電車の緊急停車や安全点検、ネット上に動画が出回り炎上したことへの苦情対応に追われたことによる威力業務妨害で検挙。

 

▼フリマアプリを悪用した児童ポルノ提供事件

【内容】女子児童らがSNS上で、自画撮りしたわいせつ画像や下着の購入者を募った。その代金を受け取る手段としてフリマアプリを悪用。架空の商品を落札、入金されたことを確認して、わいせつ画像を送信した。

【罪名】女子児童はわいせつ画像の不特定多数への提供違反、購入者の男は自己性的目的所持違反により児童ポルノ禁止法違反で検挙。

年々増え続ける被害児童数

 SNSなどがきっかけとなった犯罪の被害児童数は年々増えている。福岡県内で2014年に67人だった児童数は、18年は2倍以上の140人に。罪種別では、県青少年健全育成条例違反の「淫行」が38.6%、次いで「児童ポルノ」が28.6%、「児童買春」が27.1%だった。被害事例を紹介する。

 

▼児童買春

 SNSを通じて知り合った女子中学生に対し、現金を渡す約束をして性交した。

 

▼裸姿の写真の送信強要

 SNSで知り合った女子中学生に裸姿を撮影させて送信させ、後日ホテルに呼び出してわいせつ行為をした。さらに、画像をばらまくなどと脅して新たに裸姿を撮影するよう強要した。これは児童ポルノ製造、福岡県青少年健全育成条例違反のほか、刑法の強要罪にあたる。

サイバー補導は県警職員がSNSなどをチェックする(イメージ)
サイバー補導は県警職員がSNSなどをチェックする(イメージ)

県警「サイバー補導」で見守り

 最近は「パパ活」「ママ活」といった、一緒に食事などをする見返りに金銭的支援を受ける子供が増えている。ネット上で知り合った見知らぬ相手と会ったことから性的被害や痛ましい事件に巻き込まれたりすることも。福岡県警少年課はこうした被害から子供たちを守るため、「サイバー補導」に力を注いでいる。

 

 県警職員がSNSなどコミュニティサイトを検索。金銭目的でデートを求める書き込みなどがないかをチェックする。不適切な投稿を発見すると、投稿者と連絡を取り合って待ち合わせ、実際に会って補導し、助言や指導をするというもの。昨年は306人を補導したが、この内8割が非行歴も補導歴もない、ごく普通の子供だったという。

 

情報モラル教育の大切さ

 SNSがきっかけとなったネット非行や犯罪被害の事例を挙げてきたが、だからといって「子供には必要ない」とスマホやSNSを否定するだけではトラブルを防ぐことはできない。

 

 スマホ、携帯電話の所有率は高校生が97.5%で中学生は70.6%。小学生でも45.9%と半数近い(内閣府「平成30年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」より)。

 

 この普及率を受け、福岡県警少年課も低年齢層への情報モラル教育に力を入れ始めた。「被害の中心となる中高生になる前から、インターネット利用にかかる教育をする必要がある」と考え、通信事業者と連携して小学生とその保護者に対する防犯教室を行っている。

 

 家庭や周りの大人がSNSのメリットとデメリットの両方を理解し、日頃から情報モラルの教育をしていくこと。それが、子供たちをトラブルから守ることにつながる。

お父さん世代にもできる情報モラル教育

 福岡県内で情報モラルをテーマにした講演を行う「伝えるを考えるプロジェクト」の置鮎正則代表は「SNSのリスクを説明して『怖がらせる』指導ではなく、本来のメリットも伝えるべき」と訴えている。講演では良い面、悪い面の両方を、年齢に合わせて順序立てて説明。正しい使い方を学んでもらっている。

 

 同代表は、SNSにそれほど詳しくないような、“お父さん世代”でも日常的に情報モラル教育ができるという。『了解』のことをネット用語では『り』と略されることなどを例に挙げ、「ネット上でのいじめや仲間外れは、言葉が正しく伝わらず、勘違いによって起きたりする。正しい日本語や言葉遣いを教えるだけでも立派な情報モラル教育になる」と呼びかけた。

 >伝えるを考えるプロジェクト

 

 福岡では「KCS福岡情報専門学校」など、情報技術(IT)に携わる学校や企業、各種団体が情報モラル教育をテーマにした講演を行っている。

募金活動を行うつくば開成福岡高校の生徒たち(同校提供)
募金活動を行うつくば開成福岡高校の生徒たち(同校提供)

利便性や危険性を生徒同士で意見交換

つくば開成福岡高校 教育現場の取り組み

 学校でも情報モラル教育が行われているが、教師がスマホやSNSのことを丁寧に伝えていくには限界がある。専門知識があるわけではないので、情報の収集や整理だけでも時間がかかってしまうからだ。

 

 つくば開成福岡高校(福岡市中央区天神)は「生活と経済」という科目の中でSNSをテーマにした授業を行っている。講話を聞いたり、映像を見るだけではなく、生徒同士でSNSの利便性や危険性の意見交換をして理解を深めている。学校で情報モラル教育を充実させるならば、同校のようにこの問題を授業に組み込む必要性がある。

 

 松永健一校長は「基礎学力を上げることも大切ですが、世の中のことと結びつけ、(不適切投稿などに)関わらないという判断力を身につけることが大事です」。同校では毎年、24時間テレビの募金活動に参加。社会と関わりを持つことで世間を知り、ものの見方や考え方が広がると考えている。

 

◆つくば開成福岡高校 2015年に創立。登校日数は週1回や3、5回、集団型クラス(15人程度)や個別型(4~5人)クラスなど、学習スタイルを選択できる単位制・通信制の県認可私立校。生徒数約250人。長所を伸ばし、個性を大切にする教育方針で、在学時に起業した卒業生もいる。また「24時間テレビ」のボランティア活動に参加するなど社会貢献にも力を入れている。福岡市中央区天神5の3の1。092-761-1663

 >つくば開成福岡高校

福岡県下の少年サポートセンター

 福岡県警は県内5か所に相談窓口「少年サポートセンター」を設置。専門知識を持つスタッフが子供や保護者の相談に応じ、問題解決に向けて助言や指導を行っている。

 

▽中央少年サポートセンター

 春日市原町3の1の7 福岡県福岡児童相談所3階 092-588-7830

▽福岡少年サポートセンター

 福岡市中央区地行浜2の1の28 福岡市こども総合相談センター5階 092-841-7830

▽北九州少年サポートセンター

 北九州市戸畑区汐井町1の6 ウェルとばた5階 093-881-7830

▽飯塚少年サポートセンター

 飯塚市飯塚14の67 イイヅカコミュニティセンター2階 0948-21-3751

▽久留米少年サポートセンター

 久留米市諏訪野町1830の6 えーるピア久留米3階 0942-30-7867