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【福岡】折尾の「かしわめし弁当」 愛され続けて100周年
- 2021/9/30
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東筑軒 JR折尾駅名物の駅弁
どこかなつかしく、一度食べると忘れられない味--。駅弁でおなじみの東筑軒(北九州市)の「かしわめし弁当」が販売開始されたのは1921年(大正10年)。今年が100周年にあたる。創業以来の味を継承し、全国でも珍しくなった駅弁の立ち売りを今も続けている。なぜこれほど長い間、多くの人に愛され続けているのか。「名物」のこだわりを探った。(加藤 博之)

現在も駅弁を立ち売り
「折尾名物~、かしわめし~」。JR鹿児島本線折尾駅のホームで、販売業務を担うのは東筑軒の小南英之さん(61)。首から下げた木箱には弁当が積まれている。「一つ、くださいな」。「ありがとうございます」。昔ながらの光景が、ここにはまだ残されている。
変わらぬ人気を支えているのは、味へのこだわりだ。木製の蓋を開けると、独特の香りがふわりと広がる。かしわ、きざみのり、錦糸たまご。3色に分かれたおなじみの彩り。そして何より、鶏肉のうまみが凝縮された炊き込みご飯が食欲をそそる。

門外不出の配合
ご飯を炊く時の調味料の配合は門外不出。創業者の本庄巌水さんの妻・スヨさんが生み出したものだ。一子相伝で代々、女性のみに受け継がれている。佐竹真人社長(64)は「かしわだしの奥深さと調味料のバランスは、他でまねできない。また食べたくなる味と言っていただける理由だと思います」と説明する。
ただ、変わらぬ味を提供し続ける難しさもあるという。鶏肉の質が変化し、ご飯を炊く時の「肝」となる鶏ガラスープも以前ものとはずいぶん変わった。それでも機械を使って濃度などを測りながら、昔ながらの味を望む声に応える努力を怠らない。

「味を変えない」
新幹線が登場し旅行はスピード化。その形態も時代とともに変化してきた。それでも100年の間愛されてきた。佐竹社長は「駅での立ち売りが原点。昔ながらの文化、風景として次世代に伝えていきたい。一番肝心なのは味を変えないこと。ずっとソウルフードとして支持され、150年、200年続けていけるように」と話した。
「折尾名物~、かしわめし~」。折尾駅のホームには今日も、「感謝の気持ちを持って頑張っています」という、小南さんの声が響いている。
(2021/9/28紙面掲載)