【フルコンタクト空手】藤原桃萌 完全復活V 男子は前平斗真準優勝、藤田春人が4強入り/全九州空手道選手権大会

第36回オープントーナメント全九州空手道選手権(2023年8月20日・福岡国際センター)

幼年から一般まで69部門に1042人がエントリー

 第36回オープントーナメント「全九州空手道選手権大会」が8月20日、福岡市の福岡国際センターで開催された。幼年から一般までの69部門に1042人がエントリー。直接打撃制によるトーナメント方式で争われた。メインの一般上級の部では、いずれも新極真会福岡支部の前平斗真(23)が準優勝で、藤田春人(20)も4強入りした。優勝は同カザフスタン支部のアンジェイ・キンゼルスキー(18)。女子フルコンタクトの部は、福岡支部の藤原桃萌(24)が制した。

地元勢女子のタイトル奪還を成し遂げた藤原

女子フルコンタクトの部/藤原桃萌 打倒漢向け研究

 藤原は、決勝で漢藍理を延長戦の末に判定3―0で下し、勝利をつかみ取った。「完全復活です」。涙で目を赤くした後に、満面の笑みを浮かべて優勝トロフィーを高らかに掲げた。

 下馬評通りに決勝は、藤原と漢の顔合わせとなった。ともに10月に開かれる世界大会の日本代表選手。藤原にとって、漢は5月の全日本フルコンタクト空手道選手権(JFKO)重量級準決勝で敗れた相手でもあった。この試合後、藤原は「相手に研究されていた」と敗因を分析。その後、負けた準決勝の映像を何度も見直して、打倒漢に向けて自身も研究を重ねた。

 下段回し蹴りで攻めてくると予想し、その攻撃にほんろうされて後ろに下がらないように心掛けて、決勝のコートへ。開始の合図とともに、間合いを取らずに接近戦となり、突きと下段回し蹴りの応酬となった。互いに一歩も譲らない展開で、2分間の本戦は、審判員5人全員が引き分けの判定だった。

5月のJFKOの雪辱を果たした藤原

延長戦も想定内

 「本戦で決着がつかないことは最初から想定していた」と藤原。延長戦では、深く踏み込んできた漢を前蹴りでけん制する一方、相手の後ろに回り込み、下段回し蹴りを織り交ぜて得意の左の下突きで攻め立てた。

 残り10秒で、両者は同時に前蹴りを仕掛けると、体がぶつかり合った。藤原はそこから、最後の気力を振り絞って猛ラッシュをかけた。「圧力」をテーマに臨むと宣言していた通り、終了の笛が鳴るまで攻撃の手を緩めなかった。

二つの「気付き」

 藤原は、5月のJFKOまでの約1年間、けがのために試合から遠ざかっていた。けがは、自身に二つの大きな気付きをもたらした。一つは、試合に出場できることへの感謝の気持ち。以前は、当たり前と思っていたが、とてもありがたいことと実感した。もう一つは、けがのときに支えてくれたり、応援してくれたりした家族や福岡支部の仲間、道場の教え子らが、いかに大事な存在かということだった。緑代表からも「世界大会につながるようにしっかりと頑張るように」と励ましの言葉をもらった。

 「本当は気持ちが弱くて、延長戦になると負けてしまう。でも、みんなに恩返ししたいという強い思いで最後まで戦い抜くことができた」と藤原。今大会の決勝後は感謝の言葉が絶えなかった。

 けがを克服し、苦しい時期を乗り越えて、一回り成長して空手の世界に戻ってきた藤原。次の照準は10月の世界大会。「接近戦で手数だけで勝負しても勝てない。足腰をもっと強化して、強いパンチを打てるようになることが課題」と力を込めた。

最後まで攻めの組手を披露した昨年王者の前平

一般上級の部/前平斗真 昨年王者、連覇ならず

 昨年王者の前平が決勝で涙をのんだ。2年連続で最終ゼッケンを背負い、連覇を誓っていただけに、「優勝しないと意味がない試合だった。期待に応えられなかった」と悔しさをにじませた。

 決勝の相手は、カザフスタン支部のアンジェイ。10月の世界大会に出場する予定で、その前哨戦として全九州大会に乗り込んできた。

 開始直後、互いに相手の出方を探ると、最初に動いたのはアンジェイ。中段回し蹴りを仕掛けてきたが、前平はこれをかわし、得意の接近戦に持ち込んだ。「コートで対面しても恐怖はなかった」と前平。その言葉通りに圧力をかけられても後ろに下がらず、何度もコーナーに追いやった。時折飛んでくる鋭い上段回し蹴りにも冷静に対処しながら、果敢に攻め続けた。

 勝負は本戦、延長戦でも決着がつかずに再延長戦へ。最後まで勝敗の行方はわからない展開だったが、判定で敗れ、あと一歩及ばなかった。

教え子ら応援に感謝

 前平は、軽中量級で今年のJFKO3位、昨年の同大会で準優勝だった。いずれの大会でも、勝ちたい気持ちが先走り、押しの注意を取られていたことが課題となった。しかし、今大会は、いつものように接近戦の打ち合いになっても反則を取られることは少なく、着実に成長している姿を見せた。

 今の支えとなっているのは、道場の教え子たちの存在だ。今大会の準決勝では顔面殴打を受け、決勝に臨む直前までダメージが強く残っていた。そこに教え子らが駆け寄ってきて「頑張ってください」、「あと一つです」と声を掛けてくれた。前平は「その言葉があったから決勝を頑張ることができた」と感謝した。

 次の目標は、来年のJFKO王者。応援してくれるたくさんの人たちの思いを胸に、これからも挑み続ける。

国際大会に出場経験のある藤田は、悲願の優勝に届かなかった

藤田春人 4強「悔しい」

 藤田は、優勝したアンジェイに準決勝で敗れた。勝てば、前平との地元福岡支部同士による頂上決戦だったが、実現せず。「優勝を目指していたので悔しい気持ちでいっぱい」と振り返った。

 ただ、手応えを感じる勝利もあった。準々決勝の相手は魚本尚久真で、昨年、一昨年のJFKO軽量級を制覇している実力者。今大会で越えなければならない関門の一つだった。

 緑代表からは「強いけど絶対に勝てるから頑張れ」との激励を受けていた。一進一退の攻防が続いたが、再延長戦の末、判定3―0で破った。藤田は「ボディやインローをうまく当てることができたが、相手からもローをもらいすぎた」と反省しつつ、「攻撃をもらわない組手をもっと目指して、また一から頑張っていく」と決意を新たにした。

地元福岡支部の選手らの健闘をたたえる緑代表

緑健児代表総括コメント

 非常にレベルの高い大会でした。地元の選手が頑張ろうという気持ちがすごく伝わってきました。海外の選手も参加している中、みんな最後まであきらめずに立ち向かってくれました。前平選手はここ一番の勝負で強くなってくれたらいいですね。世界大会に出場できる選手になれると思います。

(2023/9/1紙面掲載)

関連記事

関連記事

過去記事(月別)

ページ上部へ戻る