【高校野球】明豊 中山圧巻の完封劇 天国の仲間に捧げる甲子園切符/大分大会決勝

◆第105回全国高校野球選手権記念大分大会 ▽決勝 明豊3―0大分商(26日・別大興産スタジアム)

 大分の決勝では、明豊がエース・中山敬斗(3年)の完封で大分商を3―0で破り、3年連続9度目の甲子園出場を決めた。早世した仲間にささげる優勝となった。山口の決勝でも、宇部鴻城のエース・浅田真樹(3年)が南陽工を完封。7―0で勝利した宇部鴻城が4年ぶり3度目の甲子園切符をつかんだ。

帽子のつばに「孝成と共に」と書き込んだ明豊・中山

ピンチに「力を貸してくれ」

 たった一人のマウンド。明豊の中山はしかし、どんなピンチを招いても孤独を感じてはいなかった。大会を通して、帽子のつばに書き込んだ「孝成と共に」の文字をことあるごとに見返して、自らを奮い立たせてきた。

 決勝のマウンドも同じだった。3点リードの6回。失策などで2死一、二塁のピンチを迎えた。打席には相手の4番打者。「力を貸してくれ」。そう念じ、気持ち込めたボールをミットめがけて投げ込んだ。見逃し三振に仕留め、無失点で切り抜けた。

 昨年8月。チームメートだった吉川孝成さんが、練習試合で捕手として出場中に倒れ、その後、意識が戻らぬまま亡くなった。入学直後の不安いっぱいの頃、最初にボールを受けてくれたのが、同じ関西出身の同級生・吉川さんだった。「お前、すごい球投げるな」。その笑顔を見て、少し気が楽になった。

マウンドに集まり歓喜する明豊ナイン

三塁踏ませず2安打完封

 「孝成と共に戦って、甲子園に行こう」。いつしか、それはチーム全員の思いになった。どんなにきつい練習でも、野球ができる喜びを感じずにはいられなかった。中山も成長を遂げた。昨秋に最速141キロだった球速は、冬場の走り込みで147キロをマークするまでになった。大会前には「背番号1」を渡された。川崎絢平監督(41)に「9回を一人で投げきってこい」と送り出された決勝のマウンドで、許したのはわずか2安打。三塁を踏ませない完封劇に、指揮官も「完璧でした。100点満点」と、うなずいた。

 3年連続の甲子園。「言葉にできない感情がある。つらいこと、悲しいことを力に変えてくれた選手に感謝したい」と川崎監督。勝利の瞬間、マウンドの中山は天を見上げ、両拳を突き上げたまま、しばらく動かなかった。次々と集まってきたナインも、同様に夏の空を見上げた。孝成、ありがとう――。 (加藤 博之)

(2023/7/27紙面掲載)

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